小麦粉には「薄力粉」や「中力粉」、「強力粉」、「デュラムセモリナ粉」等の種類がありますよね。料理をされる方であれば「強力粉」はパン類、「薄力粉」は菓子類、「デュラムセモリナ粉」はパスタに使われている…と覚えていると思います。でも、これらがどういう基準で種類分けされているのか説明できますか?
今回はこれらの小麦粉の種類の違いについて説明します。
小麦粉の分類方法について
まず、薄力粉や強力粉、デュラムセモリナ粉といった小麦粉の種類について見ていく前に、小麦粉にも様々な分類方法があるということについて触れたいと思います。
というのも、これらの種類については、実は分類方法が違うものが混ざっていたりして同列で話し始めるとちょっとややこしいからです。
小麦粉の分類方法は一般的には以下のようなものがあります。
- 小麦の種類
- 小麦粉の加工方法
- 小麦粉のタンパク質の量と性質
- 小麦粉の灰分量
このうち、スーパー等でよく目にする「薄力粉」などの表記は3番目の「小麦粉のたんぱく質の量と性質」をもとに分類したものです。
1番目の「小麦の種類」は一般的な家庭ではほとんど意識されることはあまりありませんが、前提として知っておくと頭の整理がしやすくなると思います。
2番目の「小麦粉の加工方法」についても、一般的な家庭ではほとんど意識されることはあまりありません。製菓用食材の専門店で見かける「全粒粉」や「グラハム粉」、「セモリナ粉」等の違いを説明します。
4番目の「小麦粉の灰分量」はこちらもプロや業者、パン作りなどでこだわる人以外は意識することはあまりないので、おまけ程度に見ていきたいと思います。
それでは、それぞれの分類方法について見ていきましょう。
「小麦の種類」からみる分類
小麦粉はみなさんご存じの通り「小麦」を挽いて作った食材です。
小麦にもいくつか種類があり、その中でも「普通小麦」と「デュラム小麦」の二つがメジャー。消費されている小麦のほとんどがこれらの種類です。
普通小麦
我々がスーパーで購入できる小麦粉は「普通小麦」または「パン小麦」と呼ばれるものです。
名前にもあるようにパン類、あとは中華麺、うどんなどの麺類、菓子類もこの小麦をもとに作られます。我々がスーパーなどで手に入れる「薄力粉」や「強力粉」はこの普通小麦が原料です。
デュラム小麦
パスタ好きなら知っている「デュラム小麦」。「マカロニ小麦」とも呼ばれています。
この小麦から作られた小麦粉は、こちらも名前の通りパスタやマカロニの材料として使われます。
小麦粉としては後述の「セモリナ粉」として加工されます。パスタのパッケージで「デュラムセモリナ粉使用」という表記を見たことがある人も多いはず。
「小麦粉の加工方法」からみる分類
小麦の構成要素は「表皮(皮)」「胚乳(実)」「胚芽(芽)」の3つ。これらのどの部分を使っているかによって分類されています。また、小麦の挽きの荒さ・細かさによって呼び方が変わる場合があります。
普通の小麦粉
普通の小麦粉は胚乳の部分のみを使用しています。ここでいう普通の小麦粉とは「薄力粉」や「強力粉」といった名称で販売されている一般的な小麦粉のことです。
表皮や胚芽を取り除いて加工されているので、全粒粉やグラハム粉と比べると白っぽい色をしています。
全粒粉
普通は取り除く表皮・胚芽を取り除かず、小麦の粒をまるごと挽いたものが「全粒粉」です。
表皮や胚芽もそのまま加工されているので、普通の小麦粉と比べると黄色っぽい色をしています。
グラハム粉
「グラハム粉」は全粒粉の一種です。しかし、一般的な全粒粉とは加工法が少し変わっています。
胚乳は普通の小麦粉と同じ細かさで挽きますが、表皮と胚芽は粗挽きにしています。これらを最終的に混ぜ合わせたものです。
粗挽きにした部分によってざらざらした触感(食感)があるのが特徴です。この小麦粉でつくる食品としては、グラハムクラッカーが有名です。
セモリナ粉
普通の小麦粉と同様に、表皮・胚芽が取り除かれた小麦を粗挽きにしてつくる粉が「セモリナ粉」です。
「デュラムセモリナ粉」はデュラム小麦を使って作ったセモリナ粉なので、「デュラム(小麦の種類)・セモリナ粉(作り方)」とそれぞれを合わせた名前で呼ばれています。
「小麦粉のタンパク質の量と性質」からみる分類
さて、ここからが我々がよく目にする部分です。
小麦粉はたんぱく質の含有量と性質により「強力粉」「中力粉」「薄力粉」の3つに分類されます。
また、専門店などでは、強力粉と中力粉の間に「準強力粉」という分類があり、「フランスパン用粉」として売り出されています。
これらの分類はたんぱく質の強さと量によって分けられており、強力粉はたんぱく質が強く量も豊富で、薄力粉は逆に弱く量が少なくなっています。
たんぱく質の含有量等のほか小麦粉の粒度も考慮されており、強力粉のほうが粒度は荒め、薄力粉のほうが細かい傾向にあるようです。
一般的な分類の基準と用途、たんぱく質の含有量は以下の表に示す通りです(ここでは農林水産省の麦の需給と価格についての公表資料の参考資料から引用します)。
小麦粉の種類 | たんぱく質の含有量 | 用途 |
強力粉 | 11.5%~13.0% | 食パン |
準強力粉 | 10.5%~12.5% | 中華麺、餃子の皮、フランスパン |
中力粉 | 7.5%~10.5% | うどん、即席めん、ビスケット、和菓子 |
薄力粉 | 6.5%~9.0% | カステラ、ケーキ、和菓子、ビスケット、てんぷら粉 |
こうして中力粉と薄力粉のたんぱく質の含有量を見てみる、薄力粉と中力粉の含有量はそれほどかわりません。ただ、使われる品種が異なるためたんぱく質の強さで違いが出てくるのかもしれませんね。
デュラムセモリナ粉についてもたんぱく質の含有量の記載があったので、こちらも農林水産省の資料から引用します。
小麦粉の種類 | たんぱく質の含有量 | 用途 |
デュラムセモリナ粉 | 11.0%~14.0% | マカロニ、スパゲッティ |
デュラムセモリナ粉は、強力粉と比べてたんぱく質が多いですが、普通小麦よりもたんぱく質が粘りが少ないと言われています。この性質がパスタやマカロニ特有の歯ごたえを生んでいるんですね。
「小麦粉の灰分量」からみる分類
最後におまけ。「灰分量」による分類も見ておこうと思います。
「灰分量」とは無機質の含有量のこと。この灰分量が少ないほど良質な小麦粉として取引されます。
また、灰分量とその他から総合的判断して「等級」を決めています。製粉振興会の資料から目安となる数値を引用します。
等級 | 灰分量 |
特等粉 | 0.3%以下 |
1等粉 | 0.3~0.4% |
2等粉 | 0.5 %前後 |
3等粉 | 1.0 %前後 |
末粉 | 2~3% |
パン・製菓材料専門店で販売されている小麦粉には表記されている場合がありますが、スーパーなどで販売されている一般的な小麦粉には記載されていません。
まとめ
ひととおり見てきましたが、結構ややこしいことになっていますね。まとめると以下の通りです。
- 一般的な小麦粉(薄力粉、強力粉等)は普通小麦から作られていて、たんぱく質の含有量や性質によって分類されている。
- 全粒粉やグラハム粉は普通小麦から作られているが、表皮や胚芽が入っている。
- デュラムセモリナ粉は、普通の小麦とは違う種類の小麦から作られている。
小麦粉も奥が深いですね…。